泌尿器科

前立腺腫瘍(癌)

症状

  • 排尿障害
  • 血尿
  • 骨転移による転移部の疼痛など

これらはいずれもある程度進行した状態で、初期ではほぼ全くの無症状です。最近は血清の前立腺癌マーカーのPSA測定で疑われ、直腸診やMRI等の画像検査の後に前立腺生検で確診することが多いです。

検査

前立腺癌の検査はまず、検診や医療機関での採血でPSA(前立腺特異抗原)という腫瘍マーカーの測定から始まります。一般的な正常値は4ng/ml未満ですが、年齢や内服薬等によって変動します。異常値の場合、泌尿器科等の専門医の受診を勧められます。PSAは前立腺癌以外の前立腺肥大症や前立腺炎でも上昇することがあり、またPSA値によってがんの存在率にも違いがあるため、精査が必要になります。
その後の検査では、一般的に直腸診やエコー・MRI検査で本当にがんが存在しているかを確かめ、がんの存在が高確率で疑われる場合は組織診断(針生検)を行い、がん細胞が確認できた場合に確定診断となります。
組織診断でがん細胞が確認できた場合は、その悪性度も10点満点で数値化(グリソンスコア)され、治療方針を決める要素ともなります。更にがんの進行度を調べるために、確定診断後は画像診断等(CT・骨シンチグラフィー)で転移の有無等を確認し、最終的に病期分類が確定され、治療を開始します。

治療

年齢、進展度、転移の有無などで異なり、転移などが無ければ75才以下では手術が第一選択です。最近では放射線治療も手術と同等の評価を受けています。日本では内分泌治療も広く行われており、放射線治療と一緒の治療、術前の内分泌治療、あるいは内分泌単独の治療も広く行われています。80歳以上の場合には特に治療せずに様子観察のみを行っている施設も多くあります。一般的に前立腺癌は比較的ゆっくりと進行するので色々な選択肢があり、前立腺癌の検査で確定した悪性度や病期分類にて年齢や合併症の有無、患者さんの体力や身体の状態等を総合的に勘案して、患者さんとご相談しながら治療方針を決めていきます。
一般的に年齢が75歳以下と比較的若く特に合併症もない場合は、根治率が最も高い手術療法(開腹手術やロボット補助手術『da vinci』)が勧められますが、術後の尿失禁や勃起障害等の合併症の可能性もあり、手術以外の治療を選択される方も増えています。
放射線療法は前立腺に直接放射性物質を埋め込むブラキセラピー、IMRT(強度変調放射線治療)や重粒子線・陽子線による外照射等の方法があります。
内分泌療法は、主に80歳以上の高齢者や転移のある方、合併症やお体の状態等にて手術や放射線療法ができない方に選択される治療で、皮下注射と内服による外来治療となります。

泌尿器科

高野 雄一

骨盤内にある膀胱や前立腺の近くには直腸があります。これらは同じ神経に支配されているため、排便障害を起こす人の3割は排尿障害も合併します。大腸肛門の専門病院にある当泌尿器科では、大腸肛門の機能に関する治療とあわせてこうした排泄障害に対処し、高齢者に起きやすい泌尿器の病気全般に対する診療を行っています。

泌尿器科部長

高野 雄一 (たかの ゆういち)