大腸肛門機能診療センター

便失禁

疾患概要

意図せずに肛門から便などが漏れてしまう状態です。特に便失禁は日本で500万人が有していると言われ、最近社会的に問題、話題になっています。

症状

気づかないうちに下着が便や粘液で汚れていた(漏出性便失禁)、トイレに間に合わず漏れてしまう(切迫性便失禁)などの症状があります。

原因

肛門の筋力が低下しているだけではなく、様々な要因が重なって漏れが生じてしまいます。

検査

検査内容

  • 問診

    詳しい問診を取り、ご症状や生活習慣、何で困っているのか、何を問題としているのか等をお尋ねします。

  • 直腸肛門機能検査

    直腸肛門内圧検査や肛門括約筋筋電図検査:肛門の筋力を評価します。
    直腸感覚検査、肛門電気感覚検査:直腸や肛門の感覚の異常を調べます。

  • 排便造影検査(デフェコグラフィ―)

    偽便を用い、直腸から肛門を通って排出に至る状態をX線下に再現させる検査法で、直腸肛門の機能あるいは形態的な変化を観察します。

  • ※必要に応じて、肛門超音波検査、大腸内視鏡検査、CT、MRI検査などを用いて調べます。

治療

薬物療法(内服薬)

ポリカルボフィルカルシウム(便性を整える薬剤)、止痢剤、整腸剤

肛門括約筋トレーニング(バイオフィードバック)

自分では肛門を締めているつもりでも、実際は臀部や足の筋肉に力が入っている方がいます。その場合、いくら自己訓練を繰り返しても肛門の筋力を上げることはできません。そこで肛門にセンサーを挿入し、肛門の括約筋が働いていることを確認しながら訓練の方法を覚えます。その後は自宅で自己訓練を続けます。

低周波電気治療

  • 脛骨神経刺激療法

両下肢のくるぶし周囲にパッドや金属の刺激電極をつけて低周波の弱い電流を流します。1日30分、週2〜3回、合計で12回行い結果を評価します。通院が難しい場合は2週間ほど入院して行う場合もあります。

  • 経肛門刺激療法

肛門に刺激電極を挿入し低周波電流を流します。1日30分、週2〜3回、合計で12回行い結果を評価します。通院が難しい場合は2週間ほど入院して行う場合もあります。

  • 仙骨神経刺激療法

腰のあたりに電極と刺激装置を埋め込んで、常時低周波電流で刺激します。簡単な手術が2回必要です。1回目の手術で電極を埋め込んで2〜3日で退院した後、2週間お試し期間がありその間に効果があれば刺激装置を埋め込む手術をします。その際の入院も3〜4日です。効果がない場合は電極を抜きます。

括約筋形成術

肛門の筋肉が断裂している場合に行います。下半身麻酔をして括約筋を縫い合わせます。10日程度の入院が必要です。

※いずれの治療も、すべての人が完全に失禁がなくなる、というわけではなく効果には個人差があります。また、現時点ではどの治療がどの様な人に効果があるかも明確ではありません。より効果があると考えられ、かつ侵襲が少ない治療から選択していきます。

大腸肛門機能診療センター

高野 正太

大腸肛門機能(直腸や肛門のはたらきと形状)を、最先端機器と豊富な知識で運動・感覚両面から捉え検査・診断を行い、最適な治療法を選択しています。筋電図検査による簡易筋電図法を確立するなど専門病院ならではの充実した検査体制に加え、医師をはじめコンチネンスリーダーと呼ばれる排泄ケア専門看護師を配置し、臨床検査技師、理学療法士、薬剤師、管理栄養士、診療放射線技師、医療ソーシャルワーカー、臨床工学技士などによるチーム医療で生活指導や集学的治療を実践しています。

院長
大腸肛門機能科部長
大腸肛門機能診療センター長

高野 正太 (たかの しょうた)