大腸肛門機能診療センター

自己臭症

疾患概要

自臭症、自己臭恐怖症とも言われており、自分の臭い(口臭、体臭、便臭など)が漏れて、周りの人がそれに気づいて嫌がっている、自分を避けているなどと思い悩むのが特徴です。
※当院は、大腸・肛門を診ている病院ですので、以降は便臭・ガス臭(おならの臭い)についての治療・検査の説明に限定させていただきます。

症状

たとえば電車に乗って隣の人がすっと立って行く、前に立っている人が顔をしかめる、近くの人が鼻をすすったり鼻を触ったなどのしぐさから、きっと自分から便やガスの臭いがする、便やガスがもれているに違いないという考えが頭の中に固定して、離れない状態となってしまいます。病院を受診し「全然臭いませんよ」と言われても、それを信じることができずに病院を転々としドクターショッピングに陥り、人と交際できない、学校に行けない、仕事ができないなど引きこもり状態で長年悩んでいる方もいます。心配性・几帳面・神経質な方に多くみられるようです。

検査

検査内容

  • 直腸肛門内圧検査

    直腸肛門内に直径約5mmの細い管(圧センサー)を入れて、肛門に力を入れて、肛門に力を入れない時(最大静止圧)や力一杯しめた時(最大随意圧)の肛門のしまる強さを測定します。

  • 肛門括約筋筋電図検査

    肛門内に直径5mmの細い棒状電極を入れて、肛門に力を入れない時と力一杯しめた時の肛門括約筋の働きを電気的に調べ、外肛門括約筋の働きを調べます。

  • 直腸感覚検査

    直腸内にバルーンを入れて、少しずつ空気を入れて膨らませながら、最初に拡張を感じた時の量(初期感覚閾値)、便意を感じてトイレに行く時の量(便意発現最少量)、便意を我慢できなくなった時の空気の量(最大耐容量)を調べます。

  • 肛門電気感覚検査

    肛門内に直径5mmの細い棒状電極を入れて、徐々に電流を強めていきます。最初に電気刺激を感じた時の電流値(感覚閾値)を調べます。

  • 生体ガス測定(ガス漏れ測定)

    おならの主成分は、窒素・水素・二酸化炭素・メタンです。測定器を用い肛門付近へセンサーを固定します。測定結果は数値化グラフ化し見ることができます。検査は2時間で基本的にベッド上で測定します。また、モバイルバッテリーを用いることで移動しながらの測定も可能となりました。

診断

直腸肛門に身体的な異常がなく、以下のような特徴があるときに自己臭症と診断されます。

  • むかつくような臭いを放っていると信じていること
  • その臭いで実際以上に他人が迷惑を被っていると考えること
  • その臭いを確かめようとしたり、臭いを防ごうとしたり、社会的場面を避けようとする
  • 症状のために個人的、家族的、社会的、職業上などに悪影響を及ぼすほど深刻である

※ICD11のOlfactory Reference Disorderの診断基準を参考に作成しました。

治療

肛門科の診察で身体的異常がないと保証してもらうのが第一です。ただそれだけでは安心できないという方が多いので、心理療法のできる施設に相談するのが一般的です。臭いだけでなく、生活全般の悩み事について相談することをお勧めします。向精神薬を服用すると役に立つことがあります。
高野病院独自の試みとして、直腸肛門機能検査を行って病態をより科学的に説明する試みや、肛門内圧バイオフィードバックといって、肛門内圧を測定しながらお尻を締める練習を行っています。肛門括約筋を強めることによって自信をつけるように働きかけます。
これらの治療は一部の人には有効ですが、残念ながら確実な治療法はまだ知られていません。その人に合った方法を探し、少しでも楽になることに援助したいと思っています。

大腸肛門機能診療センター

高野 正太

大腸肛門機能(直腸や肛門のはたらきと形状)を、最先端機器と豊富な知識で運動・感覚両面から捉え検査・診断を行い、最適な治療法を選択しています。筋電図検査による簡易筋電図法を確立するなど専門病院ならではの充実した検査体制に加え、医師をはじめコンチネンスリーダーと呼ばれる排泄ケア専門看護師を配置し、臨床検査技師、理学療法士、薬剤師、管理栄養士、診療放射線技師、医療ソーシャルワーカー、臨床工学技士などによるチーム医療で生活指導や集学的治療を実践しています。

院長
大腸肛門機能科部長
大腸肛門機能診療センター長

高野 正太 (たかの しょうた)