泌尿器科

骨盤内蔵機下垂・骨盤臓器脱

疾患概要

骨盤内の臓器、例えば膀胱や子宮・直腸などの臓器が下がり、外に脱出するようになります。悪化すると、この3つの臓器が全部脱出することもあります。
膣前壁、膣後壁、膣円蓋(子宮頸部/子宮)または膣子宮摘出後の膣断端の下垂と定義づけられています。具体的には、膀胱瘤、直腸瘤、子宮脱、直腸瘤、膣断端脱などで、女性特有の疾患です。

脱出がない場合を0期とし、ある場合は脱出の先頭部分の位置を処女膜面を基準にI期からIV期に分類します。

症状

異物感(何かが下りてくるような感じ)、腰痛、重い感じ、引っ張られる感じ、排尿困難、排便困難、排尿や排便のために指で脱を整復させる必要があるなどがあります。その一方、急に尿がしたくなり(尿意切迫感)、我慢ができずに頻回にトイレに行ったり、間に合わずに漏れてしまったり(切迫性尿失禁)することもあります。
通常寝ている時は脱が引っ込んでいるため、夜間や起床時の排尿はスムーズですが、長時間の立位後や、歩行後、あるいは午後になると症状が強くなります。しばしば入浴中に、ピンポン玉のようなものを陰部に触れることで気づきます。
脱出が重度な場合は、尿管が引っ張られて水腎症をきたすこともあります。

原因

主に骨盤の下面に張ってこれを支えている骨盤底筋のたるみによって生じます。

検査

まず問診と内診台での診察を行います。わざと咳をしたり力んだりしていただき、骨盤臓器脱の種類や程度を確認します。
排尿状態を確認するために尿流測定やエコーによる残尿測定、チェーン膀胱尿道造影検査、尿流動態検査、膀胱鏡検査などの詳しい検査を行うこともあります。

治療

  • 骨盤底筋訓練

    軽度(ステージⅠ、Ⅱ)の下垂の場合は、骨盤底筋訓練で骨盤底筋群を強くすることで、症状の改善が期待できます。しかし中等度以上(ステージⅢ、Ⅳ)の場合は、改善はほとんど得られません。

  • ペッサリーリング

    膣内にペッサリーリングを入れて、骨盤内臓器の脱出を防ぎます。3~6ヵ月毎に外来で交換します。排便時などいきんだ際にペッサリーリングが落下してしまったり、膣内にびらんができてオリモノがふえたり出血したりすることがあり、長期に継続できない場合があります。

  • 手術療法

    ステージⅡ以上で症状が強い場合は手術が適応になります。 脱出している臓器や程度によって、従来型のメッシュを使用しない手術、経腟メッシュ(TVM)手術、腹腔鏡下仙骨膣(子宮)固定(LSC)術などがあります。

泌尿器科

高野 雄一

骨盤内にある膀胱や前立腺の近くには直腸があります。これらは同じ神経に支配されているため、排便障害を起こす人の3割は排尿障害も合併します。大腸肛門の専門病院にある当泌尿器科では、大腸肛門の機能に関する治療とあわせてこうした排泄障害に対処し、高齢者に起きやすい泌尿器の病気全般に対する診療を行っています。

泌尿器科部長

高野 雄一 (たかの ゆういち)