肛門科

裂肛(俗称:切れ痔)

疾患概要

裂肛とは肛門上皮に生じた裂傷のことで、俗に「切れ痔」・「裂け痔」と呼ばれています。肛門領域の疾患では痔核や痔瘻と並んで頻度の高い疾患です。
好発部位としては、後方が最も多く約60%、前方が約20%、前方+後方が約10%、その他は側方、多数発症等です。

症状

排便時あるいは排便後の痛み、出血、掻痒感(かゆい感じ)などがあります。なんども切れて治ることを繰り返していくと裂肛の外側に皮膚垂(スキンタグ)、口側に肛門ポリープを合併し脱出を伴うようになります。また瘢痕化をきたし肛門が引き連れ、狭窄(狭い感じ)や排便困難を伴います。

診断

直接裂肛を目で見るか、肛門鏡を入れて裂肛を観察し診断します。

治療

保存治療としては軟膏や座薬、便が硬い場合は水分の十分な摂取、食事内容としては食物繊維をとることで便を柔らかくします。それだけで不十分な場合は緩下剤の投与を行います。また傷の治りを促進するビタミンEの内服を行うこともあります。慢性化して肛門ポリ一プやスキンタグ(見張りイボ)の合併、肛門狭窄を伴う場合、保存治療で改善しない場合は手術を行います。

肛門内圧が高いことで裂肛をきたしやすい場合

肛門を締める筋肉の一部を肛門の側方で切開して、肛門の緊張を下げる手術(内括約筋側方切開:LSIS)を行います。

肛門狭窄がある場合や肛門上皮が切れやすく裂肛を繰り返す場合

皮膚弁移動術(Sliding Skin Graft:SSG)と呼ばれる手術を行います。

1. 見張りいぼや肛門ポリープといった裂肛に伴う病変を切除する。
2. 瘢痕化や硬化した肛門括約筋(内肛門括約筋)を切開し、狭窄を解除する。このとき肛門内圧の高い症例では内括約筋を切開し、肛門の緊張を下げるようにする。
3. その後、肛門周囲の皮膚の一部を切開することで皮膚弁を形成し、それを肛門側に移動させて肛門を拡げると共に、脆弱な肛門上皮を皮膚に置き換え裂肛をきたしにくくする。

肛門科

辻 順行

大腸肛門の専門病院の中核となる診療科として、肛門のあらゆる疾患について診断・治療をいたします。
4つのセンターとの強固な協力体制の下、3大肛門疾患である痔核、痔瘻、裂肛のほか、直腸肛門周囲膿瘍や坐骨直腸窩痔瘻、骨盤直腸窩痔瘻などの深部痔瘻、再発痔瘻、直腸脱、フルニエ症候群、クローン病に関係した痔瘻、肛門狭窄、手術後の後遺症などあらゆる難治性肛門疾患の治療を積極的に行っています。

副院長

辻 順行 (つじ よりゆき)