消化器外科

大腸憩室疾患(大腸憩室出血・大腸憩室炎)

疾患概要

大腸粘膜が腸管壁を貫いて外側に突出し、袋状になった状態を言います。憩室は病理学的に腸壁の全層が外側に突出する真性憩室(先天性)と、固有筋層を欠く仮性憩室(後天性)に分けられます。また、真性憩室(先天性)は、右側型(盲腸から上行結腸)に、仮性憩室(後天性)は左側型(下行結腸からS字状結腸)に見られます。
昔は日本人には、憩室がある人が少なく、あっても真性憩室(先天性)がほとんどで、もともとは左側型が主流を占める欧米人に多い疾患です。しかし、日本人の食生活の欧米化さらに高齢化に伴い大腸憩室は、左側型の欧米人と同じ大腸憩室をもった人が増加してきているのが最近の特徴です。

症状

憩室自体は通常症状はありませんが、炎症を起こすと腹痛が生じます。また憩室から出血することもあり、その場合の自覚症状は下血です。

検査

  • 腹部CT
  • 注腸造影
  • 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
  • CTコロノグラフィー

治療

通常憩室があってもそれだけでは治療は必要ありません。下記のような状態になったら治療をします。

大腸憩室炎

憩室が炎症を起こすと同部の疼痛が生じます。今まで憩室を指摘されていた人で、同部が痛くなったら憩室炎を疑います。腹部CTや腹部超音波検査にて確認します。
治療の原則は食事をしない絶食です。内服や点滴で抗生剤を投与します。 炎症が進行すると憩室が破けて腸に穴が開き、腹膜炎を起こします。緊急で手術を行い、腸を切除することもあります。

大腸憩室出血

憩室から出血することもあります。今まで憩室を指摘されていた人に下血を認めたら憩室出血を疑います。造影剤を用いた腹部CTや大腸内視鏡検査で確認します。
治療の原則は食事をしない絶食です。それでも出血が続く場合は大腸内視鏡で出血している憩室を確認し、クリップなどで止血を行います。また、憩室を栄養している血管を詰まらせて血流を遮断し止血する方法もあります。

消化器外科

福永 光子

大腸肛門専門病院の消化器外科として、がん診療センターの基軸を担い、科学的根拠に基づき、人工肛門を造らない手術をはじめ、様々な消化器疾患について、患者さんの身体的負担を小さくする腹腔鏡下手術にも長年取り組んでいます。また、炎症性腸疾患(IBD)の重症例への外科的治療も積極的に行っています。

消化器外科部長

福永 光子 (ふくなが みつこ)