消化器外科

胆石症

疾患概要

胆石症とは胆嚢(たんのう)のなかに石ができる病気です。日本人では10~20人に1人ぐらいの割合で胆石が発生します。また、女性は男性の2倍の発生率があります。近年、食生活の欧米化に伴ってその発生率はさらに増加してきており、年間約10万人の方が胆石症と診断されています。
胆石だけを摘出すると、胆石が高率に再発するため、手術は胆のうを切り取る胆のう摘出術が行われます。胆のうは消化液の一つである胆汁を貯蔵しておく働きがありますが、切除しても、ほとんどの方は食事制限の必要もなく、日常生活も術前と全く変わりなく過ごすことが出来ます。

症状

  • 疼痛・発熱・黄疸が胆石症の3大症状ですが、症状の現れ方はさまざまです。
  • 疼痛
  • 脂肪分の多い脂っこい食事をした数時間後に起こることが多く、上腹部の右側から正中部に出現します。ときに、右背部の痛みや右肩の痛みを伴い、これを放散痛といいます。

  • 発熱
  • 胆石により、胆管に細菌の感染がおこると、胆のう炎や胆管炎(胆のうや胆管の中にうみがたまる)が発生し、発熱を伴うようになります。胆のう炎・胆管炎が悪化するとその感染が全身におよんで、敗血症となり、非常に重篤な状態となる場合もあります。また胆のう炎が悪化すると胆のうが壊死(くさる)となり、腹膜炎となり、緊急手術が必要となる場合もあります。

  • 黄疸
  • 胆のう炎・胆管炎がおこったり、胆管に石がつまることによって、胆汁が十二指腸へ排泄されなくなると、肝臓にも影響がおよび、肝機能の障害をおこしたり黄疸(皮膚や眼球が黄色くなる)があらわれることがあります。

検査

  • 採血
  • 腹部超音波検査(エコー)
  • MRCP(磁気共鳴胆管膵管造影検査)
  • DIC-CT: 点滴静注胆嚢胆管造影法とCT検査を組み合わせた検査

治療

無症状胆石の場合は原則経過観察でよいとされています。 痛み・不快感・違和感などの症状がある場合、胆のう炎・胆管炎・膵炎などの合併症がある場合は、胆のう摘出術が必要です。
また、陶器様胆嚢・灰乳胆汁・膵管胆管合流異常・3cm以上の大結石を認める患者様では胆のう癌発生のリスクが高いとされ、例え無症状であっても予防的胆のう摘出術を考慮する必要があります。

  • 手術

胆石の手術は基本的には胆のうごと取り出します。現在では小さな傷でできる腹腔鏡下胆のう摘出術が第一選択ですが、状況によってはお腹を開ける手術(開腹術)を行なう場合もあります。

  • 腹腔鏡下胆のう摘出術

    従来の胆石症の手術はおなかに20cmぐらいの切開を加え手術を行っていましたが、最近では、腹部に数カ所の小さな皮膚切開を加え、ここから、腹腔鏡という内視鏡をおなかの中に入れます。術者はこれにより映し出される腹腔内の映像を、テレビモニターでみながら、お腹の外から直径1cmの管を1本、0.3~0.5cmの管を1-3本使用し、胆のうを摘出します。

    1. 傷が小さく目立たない
    2. 手術後の痛みが少ない
    3. 早期に退院可能(4日~1週間)

    といった点で従来の開腹手術より優れています。

消化器外科

福永 光子

大腸肛門専門病院の消化器外科として、がん診療センターの基軸を担い、科学的根拠に基づき、人工肛門を造らない手術をはじめ、様々な消化器疾患について、患者さんの身体的負担を小さくする腹腔鏡下手術にも長年取り組んでいます。また、炎症性腸疾患(IBD)の重症例への外科的治療も積極的に行っています。

消化器外科部長

福永 光子 (ふくなが みつこ)